2015年7月13日月曜日

KARA物語4 ~ 失速の兆候

『The First Blooming』の発表後、KARAは精力的な活動を開始する。
テレビ番組やミュージックフェスティバル、イベン ト等に積極的に出演してパフォーマンスを披露し、KARAの名前の売り込みとアルバムのセールスを行う。デビュープロモーションでは、所属事務所のDSP メディアも潤沢とはいえないが、可能な限りの資金と人員を投入して、テレビ局をはじめとする芸能関係者に対してKARAのプロモーション活動と番組やイベ ント等への出演交渉を行う。
だが、アルバムのセールスはあまり芳しくなかった。
アルバム『The First Blooming』は発表後まもなく、韓国アルバムチャートで最高2位を記録したが、その後大衆に浸透する勢いは持続できなかった。「Breake it」に続き、2ヵ月後には「맘에 들면 (If U Wanna)」をシングルリリースしてテコ入れをはかるが、デビュー直後のプレミアムセールス期を逃し、復調の兆しが見えない状況に、DSPでもあせりの声が出始めた。

「チェさん、私たち大丈夫これからどうなるのかな?」
KARAのマネージャーであるチェに、ニコルはまだ少したどたどしい韓国語で尋ねる。

チェ・ヨンチョルは50代半ばのDSPメディアのベテランマネージャーである。
社 長のイ・ホヨンがKARAのデビューに際し、チェ・ヨンチョルの経験に期待して、特にKARAのマネージャーにと彼を就けた。メンバーたちと親子ほども年 が離れているが、彼女たちは意外なほどチェに懐いていた。寮に寄宿するメンバーたちを毎日送り迎えし、時には食事も共にする。まだ社会に出たばかりの若い KARAにとって、チェはマネージャーであり、寮長であり、社会生活の先生のような存在だった。
芸能マネージメントに30年携わってきたチェは芸能界の酸いも甘いも知り尽くしている。
DSPメディアの戦略会議でもKARAの思わしくない状況に苛立ちの声が上がるなか、セールスの継続を主張してた。
チェは、確かにKARAにとって今の事態は歓迎すべきものではないが、不思議と彼女たちの将来に楽観的だった。
KARAには人を惹きつける魅力がある。きっと、彼女たちは大衆に受け入れられる・・・

「ニコル、大丈夫だよ。KARAはまだデビューしたばかり。これからも色々なことがあるよ。だから今はしっかりと力を蓄えるんだ。君たちにはとてもすごい可能性がある。僕にはわかるんだ」
「うん、わかったわ!わたし、しっかり練習するね」
ニコルが笑顔になる。
チェからも思わず笑みがこぼれる。この笑顔があれば大丈夫。
チェは力強くうなずいた。

この間、ニコルは韓国語を勉強をしながら大学に通い、スンヨンや他のメンバーたちもそれぞれ大学に通い、学業と芸能活動を並立しする日々を過ごしながら、アルバムのプロモーション活動を継続した。

0 件のコメント:

コメントを投稿